「リー・ハーヴェイ・オズワルド」ケネディ暗殺の実行犯と認定された人物の素性について、ウオーレン報告書は数々の証拠を列挙している。そのなかで委員会はオズワルドの凶暴性、すなはち「こんな事をしているのであるから犯人たりえる」と指摘する一つが、暗殺事件の半年前に起きた「エドウイン・ウオーカー将軍狙撃事件」である。委員会はこの事件の犯人もオズワルドであったと結論付けるのであるが、この中にも数々の素朴な疑問点が存在する。

エドウイン・ウオーカー

エドウイン・ウオーカーは1909年テキサスで生まれ、ウエストポイント士官学校卒業のアメリカ陸軍のエリート士官であった。第二次世界大戦のイタリア戦線・朝鮮戦争などで活躍し、帰国後アーカンソー州リトルロック地区司令官となり、在任中「リトルロック事件」に関与、1959年ヨーロッパ第24軍司令官としてヨーロッパに赴任。在任中の1961年極端な反共教育によって告発され陸軍少将の地位で退役した。思想的には、極端な反共主義者で1961年の「メレディス事件」での黒幕とも噂され、一部には白人至上主義団体「KKK」のメンバーではとも噂されていた人物である。この彼が1963年4月10日午後9時ごろダラス市内の自宅において狙撃されたのである。いわゆる「ウオーカー将軍暗殺未遂事件」である。ウオーレン報告書では「オズワルドが周到な準備の上、4月10日にエドウイン・ウオーカー退役少将を撃ったと」結論付けている。

発端

この事件とオズワルドとが結び付けられたのは、大統領暗殺事件の後2週間以上経ってからのオズワルドの妻「マリーナ」のFBI に対する話からであった。もちろん、ウオーカー事件の捜査は引き続き行われていたはずであったのだが、この半年以上の間、オズワルドが事件の捜査線上に浮かんできたと言う話は聞かない。ウオーレン委員会でのマリーナの証言によると、オズワルドは「今、ウオーカー将軍を撃ってきた」とはっきりと断言したと言うのである。さらにオズワルドの遺品の中から「襲撃計画の詳細を記したノート」や「ウオーカー邸の写真」、「遺書めいたメモ」「ウオーカー邸周辺の地図」(左下写真)など数々の関連物が発見された事が証拠(右写真)とされたのである。(後述)こうして、「銃を偽名で購入」したり「誇らしげに写真」を撮らせたり「警察官を殺害」したり「襲撃事件」を起こしたりする「凶暴犯オズワルド」が出来上がっていったのである。ウオーレン報告書はその第一章の結論11項で彼の性癖について触れ、その4で「彼のウオーカー将軍殺害未遂にみられるような暴力的傾向」と述べ、結論としているのである。さらに「殺人未遂の前歴」と題する項目を設けて詳しくその内容を記している。そこで委員会はウオーカー将軍を狙撃した犯人はオズワルドである証拠として四つの理由を述べている。1 オズワルドが妻マリーナに遺書めいたメモを残している。2 大統領暗殺事件のあと彼の持ち物から発見された写真。3 ウオーカー邸内で発見された弾丸を発射した銃器。 4 オズワルドが妻マリーナに述べた告白、である。
最初の「メモ」であるが、ロシア語で書かれたこのメモはFBIの筆跡鑑定の専門家ジェームズ・ガディアンによって本人の筆跡と確認されている、ただ内容的には、私書箱のカギの事や私物の処理方法、はては電気代やガス代の支払いや給料の受け取り方法にまで及んだ、いわば事後処理のマニュアルみたいなものである。確かに何かの犯罪によって自分の身柄が拘束された後、アメリカ生活になれない妻を心配する内容ではあるが、これが即ウオーカー事件の証拠とはなり得ない。勿論、他の証拠によって裏付けられた後の傍証にはなるであろうが。「残された写真」については次項に譲るとして、三番目の「弾丸」の件にいたっては、ウオーカー事件に使用された銃と大統領暗殺事件に使用されたカルカノ銃とを結びつける為にむちゃくちゃな論理が展開される。報告書にいわく、銃器鑑識の専門家二人(FBIのロバート・フレイジャーと鑑識捜査局のジヨセフ・ニコル)は、ウオーカー邸内で発見された弾丸が、カルカノ銃から発射されたものであるのかどうかについて、一人は「断定出来ない」と言い、一人は「可能性がある程度」と鑑定したにもかかわらず、その鑑定結果を援用して報告書自身「断定できない」と述べてたうえで臆面もなく「オズワルドを狙撃と結びつける他の証言と関連させてみると犯行の証拠となる」と結論するのである。同じような論理は「魔法の銃弾」に対する論理に発展する。すなはち、専門家がある現象を可能性としては極めて可能性の低い現象であると指摘しても、他の推論から導かれた状況から考えると絶対的な現象である、と言う論法である。最後のマリーナの証言については、報告書は妻マリーナが事件直後に聞いた「オズワルドの告白」が最も重要な証拠として全面的に採用している。親族の証言を最重要視するなどと言うことはあってはならない事であろう。
それでは、オズワルドが狙撃の犯人だとしてもなぜ彼はウオーカー将軍を殺害しようとしたのであろうか。先ほどの妻マリーナの証言によるとオズワルドは「彼(ウオーカー)はファシストでありファシスト組織の親分なんだ」と答えたと証言している。他にもオズワルドが自分の「不名誉除隊」の処分に怒り、当時、退役とはいえテキサスにおける軍人組織の重鎮であったウオーカーに「不名誉除隊」の処分撤回を依頼していたにも関わらず、何の手助けもしてくれなかったための逆恨み、と言う説も存在する。動機としては弱いように感じるのは自分だけであろうか。

疑惑の写真

前述の各種証拠の中で「疑惑」とされる写真が左の写真である。左上の写真は拡大写真を用意してあるのでクリックして見て頂きたい、そしてこちらの拡大写真と見比べて頂きたいのです。この写真はオズワルドの家宅捜査の時押収した品々を鑑識課員が撮影したもの(前項写真)の一部(左下)を拡大した写真です、すなはち「オリジナル」の写真を写した写真なのです。もし写真自体のオリジナルさえあればここに写っている車のナンバーを判別することはさほど困難な事ではないであろう。ところがこの「ウオーカー邸下見の時にオズワルドによって撮影された」とされるオリジナルの写真は少なくとも公表されていない。公表された写真は「ウオーレン委員会証拠番号5番A・B」「証拠番号3番」の中の小さな写真との三枚の写真だけである。一見してお分かりのように、なぜかこれらの写真に写しこまれた車のナンバープレートが雑に切り抜かれている事にお気づきのことと思います。「オリジナル」の写真を写した写真にはこんな形跡は全く無いのですから証拠の品に何らかの変造がなされたと「断言」して良いのです。それでは、何のためにこの様な細工が施されたのでしょうか?ご承知のようにオズワルドは車の免許証は持っておらず、運転も出来なかったのでウオーカー邸にはバスで行った事になっています。勿論、自分に関係のある車両をこれから狙撃しようとする人物の家のまん前に駐車するような人物は居ないので、ここに映し出されている車両はオズワルドとは全く無関係の車ということになります。その車のナンバープレートを意思をもって隠そうとした。誰が何のために?様々な推測が成り立つのではないだろうか。この車は「1957年型
のシボレーセダン」であるが、同じ「1957年型のシボレーセダン」が大統領暗殺犯逮捕劇のクライマックスにも出てくる。「委員会証拠番号1974番」は数枚に分けたダラス警察通信記録であるが、オズワルドがテキサス劇場で逮捕された後の2時33分の時点ではまだ犯人捜索が続いていた。無線交信はオーククリフ地区の全パトカーに向かいこう述べる。「2時33分頃、犯人らしき人物が、武器を携行してテンス&ジェファーソン付近(ティピット巡査殺害現場東方向・ジャック・ルビーのアパート付近となるのだが)で「1957年型のシボレーセダン」「ライセンスプレートは 『NA4445』 」に乗っているのを目撃されているから注意せよ。」と言う内容の送信記述がある。拡大写真 (2枚に亘るものを合成してあります)確かに「1957年型のシボレーセダン」はそれこそ数万台は有るではあろう。(もう一つ、事件をグラッシーノールの裏側から見ていたリー・パワーズの証言のなかにも、年式は不明であるが「シボレーセダン」は出てくる。事件直前、操車場の中を走り回っていた謎の車も「シボレーセダン」であった。)偶然にしては出来すぎの感じがしないでもない。でも、もし後になってオズワルドの家宅捜査をした結果押収された証拠写真の車のナンバーが『NA4445』であったならば・・・・・・・

目撃者

ウオーレン報告書ではこの狙撃事件の目撃者の存在を認めている「この狙撃事件の直後、十四歳の少年が二人の男を見たと証言した」という記述である。この少年の名前はウオルター・コールマン。近所に住む少年であるが彼は事件直後一台の車が走り去るのを目撃し、乗っていた人物の顔も見たと述べている。しかしその人物はオズワルドではなかったと証言し、走り去った車は1950年型のシボレーであったとも述べているのである。さらには、ウオーカー将軍の側近達も事件の数日前から屋敷の周辺をうろつく不審な人物や車の存在を認めている、証言では不審人物は複数であり、不審車は「1957年型のシボレー」であったと述べているのである。繰り返すがウオーレン報告書ではオズワルドは常に単独で行動しており、車は運転出来ない、ウオーカー邸の下見や狙撃時には「バス」で行った事になっているのである。このように多くの証言は「複数犯」や「共犯者」の存在を匂わせている。これもそのまま「大統領暗殺事件」にもあてはまるのである。それでは、オズワルドを含む複数の人物達が「予行演習」として事件を引き起こしたのか、「下院暗殺問題調査特別委員会」はこう述べる。「彼が(オズワルド)ウオーカー将軍の命を狙った時、彼に共犯者が居たことを証明できたとするならば、その共犯者達はグラッシノールの狙撃者の候補者になり得る」と