だからこそ私は、無知がしばしばはびこり、真実がごくまれにしか理解されない地上の問題を論じる為に、今日、この場所をえらんだのである。この問題こそ、地上の最も重要な問題、すなはち平和ということである。 今日、われわれがそれを使う必要を確実になくすために調達される兵器に毎年費やされている何十億ドルもの支出は、平和の維持する為に絶対に必要である。しかし、破壊することができるだけで、決して創造することのできない、これら遊休兵器の蓄積が、平和確保の唯一の方法でなく、いわんや最も有効な方法ではないことは確かである。 それゆえ私は、理性的な人々が必然的にもつべき合理的目的としての平和について語っているのである。私は平和の追求が戦争の追求ほど劇的でないことを知っている。そして、しばしば平和追求者の言葉は、またかというように聞き流されてしまう。だが、これ以上緊急な仕事はないのである。 第二に、ソ連に対するわれわれの態度を再検討しようではないか。ソ連宣伝家たちが絶えず書いている通りのことを、ソ連指導者たとが実際に信じているかもしれないと思うと、悲観せざるをえない。軍事戦略に関する最近のソ連の教本を読んで、各ページごとに、「米帝国主義者は違った形態の戦争を始めようと準備している」とか、「米帝国主義者はソ連にたいして予防戦争を始める恐れが多いに在る」とか、「米帝国主義者の政治的目的は、ヨーロッパその他の資本主義諸国を経済的、政治的に隷属させ、侵略戦争によって、世界支配を達成するにある」といったような、まったく根拠のない途方もない、いいがかりがいろいろ書かれているのをみると、悲観せざるをえない。 要するに、アメリカとその同盟国、およびソ連とその同盟国は共に、真の公正な平和の確立と軍拡の停止に、相互に大きな利害を持つているのである。この目的に対する協定は、アメリカばかりでなくソ連の利益にもなるであろう。そしてどんな敵対的な国家でも、こうした条約義務だけは受諾し遵守することをきたいしてよいだろう。 だから、われわれは両国の相違点に盲目であるべきではないが、同時に両国共通の利益とこれらの相違点を解消することのできる方策に注意をむけようではないか。またこれらの相違点を今すぐなくすことはできないにしても、少なくともこの世界に多様性が安全に存在することができるであろう。 しかし、われわれの利害はただ自由の辺境を防衛する点で一致しているだけでなく、平和への道を追求する上でも一致しているのである、われわれの願いは、そして同盟国の政策の目的は、各国がその将来を選択するにあたり他国の選択を侵害しない限り、各国に自国の将来を選択させるべきであることをソ連に納得させることである。自分達の政治経済体制を他国におしつけようとする共産主義の運動は、今日の世界緊張の主な原因である。なぜなら、すべての国が他国の自決の妨害を差し控えるなら、平和がはるかによく保障させることは疑う余地がないからである。 しかし、ジュネーブおけるわれわれの第一の遠大な関心事は全面完全軍縮である。それは、これと平行する政治的進展によって軍備にかわる新しい平和機構が打ち立てられるべく、段階を追って実施するように立案されたものである。軍備は1920年代以来、我が国の政府が努力して追求してきたところである。これまで三代の政府は熱心にこれを求めてきた。そして、今日見通しはどんなにかすかであろうと、われわれはこの努力を続けるつもりであり、われわれ自身を含めてすべての国が、軍縮の問題と可能性とは、実際にはどんなものであるのかをよりよく理解できるよう、努力を続けて行くつもりである。 音声ファイル開始 第一に、フルシチョフソ連首相とマクミラン英国首相と私は、包括的な核実験停止条約を早期に締結するために、近くモスクワで高級会談を開く事で意見の一致を見た。われわれは、歴史の警告に従って、これに過大な期待をよせることをさしひかえなければならないが、われわれの期待は、また全人類の期待でもある。 第二に、この件に関するわれわれの誠意と厳粛な信念をあきらかにするために、私は他国が使用しない限り、アメリカは大気圏での核実験をしないことをここに宣言する。われわれは、実験を再開する最初の国にはならない。こうした宣言は、拘束力のある正式の条約にかわるものではないが、これが条約達成の助けになる事を期待している。またこうした条約は軍縮の助けになることを期待している。 全世界が知っているように、アメリカは決して戦争を始めない。われわれは戦争を欲しない。われわれは現在、戦争を予期してもいない。現代のアメリカ国民は、戦争や憎悪や、そして圧迫は十分すぎるほど味わい尽くし飽き飽きしている。しかし、もし他国が戦争を欲するならば、それに対してわれわれはそなえるであろう。戦争が起こらぬように十分警戒するであろう。しかしわれわれは、弱国が安全であり強国が公正である世界平和を築く為に、われわれの分をつくすであろう。われわれはそのような任務について無力でもないし、その成功に絶望してもいない。自信と勇気をもって、われわれは人類壊滅の戦略に向かってではなく、平和の戦略のために努力し続けなければならない。 |